
事 例
労災による死亡と認定された外国人技能実習生が2014~16年度の3年間で計22人に上ることが14日、厚生労働省のまとめで分かった。大半が事故とみられるが、過労死も1人いた。政府統計で実習生の労災死の実態が明らかになったのは初めて。労災保険の給付対象となる休業4日以上の労災件数は3年間の平均で年475件だった。
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政府統計で実習生の労災死の実態が明らかになったのは初めて(東京・霞が関の厚労省)
実習生は職種が限られており、労災死比率が日本の雇用者全体の労災死比率を大きく上回っている。実習の名の下に日本人より危険で過酷な労働を負担している現実が示された。
厚労省によると、死亡した実習生のうち労災認定されたのは14年度が8人、15年度が9人、16年度が5人。労働基準監督署に報告があった実習生の死亡事案の中で、労災認定されたものを集計した。実習生の国籍や都道府県別の人数は不明。
法務省によると、実習生の数は14年16万7641人、15年19万2655人、16年22万8589人。集計が年と年度で違うが、単純計算すると3年間の労災死は10万人当たり3.7人になる。
一方、日本全体では厚労省の集計で14~16年の労災死は計2957人。総務省統計局による雇用者数の3年間合計(1億6964万人)で計算すると、労災死は10万人当たり1.7人。
実習生の仕事は農業、機械加工など70余りの職種だけという違いはあるものの、差が大きい。
実習生に詳しい自由人権協会の旗手明理事は「慣れない日本の労働現場、しかも労働安全衛生への意識が低い中小企業で働くことが多い上、実習生は日本語での意思疎通がうまくできない」と労災が多い背景を分析。「けがで働けなくなった実習生を強制帰国させるケースもあり、労災隠しは横行している」と話す。〔共同〕
過労事故死
比国籍技能実習生の過労死認定 岐阜労基署、残業月115時間
外国人技能実習生として岐阜県の鋳造会社に勤務し、2014年に死亡したフィリピン国籍のジョーイ・トクナンさん(当時27)について、岐阜労働基準監督署は2016年8月、長時間労働が原因の過労死として労災認定した。
外国人技能実習生権利ネットワーク(東京都)によると、2010年に茨城県潮来市の金属加工会社で中国人実習生が過労死したとして認定された事例があり、過労死認定は全国で2例目とみられる。
岐阜労基署によると、鋳造会社の実習生としてジョーイさんは2011年8月に来日し、鉄を切断したり鋳型に薬剤を塗ったりする作業に従事。2014年4月に心疾患のため従業員寮で死亡した。2014年1月末から3カ月間で、1カ月に96~115時間の時間外労働(残業)をしていた。
厚生労働省の基準では、心疾患での死亡について、発症前1カ月間に約100時間の残業をしていた場合、業務との関連が強いとしている。岐阜労基署が昨年、過労死の可能性が高いとして遺族に労災申請を勧めていた。
労基署はジョーイさんが死亡したとの情報を受け、2014年5月から鋳造会社に立ち入り調査を実施。労災に当たると判断し、昨年からフィリピンに住む遺族へ申請書類の送付や通訳の手配などの支援を続けていた。遺族には特別支給金300万円が支払われるほか、遺族年金が毎年約200万円給付される。