
事 例
実習生の労組脱退要請 高崎のAHM協同組合高崎
フィリピン人技能実習生(25)が職場の暴力に耐えかねて労働組合に加入したところ、実習生の受け入れ窓口となった監理団体「AHM協同組合」(高崎市)が労組にファクスを送り、実習生を脱退させるよう求めていたことがわかった。
実習生4人は15年4月に来日し、埼玉県の建設会社で勤務した。そこで殴る蹴るの暴力や「ばかやろう」など暴言を日常的に受けた。
4人は16年12月、労組「神奈川シティユニオン」に入った。労組はAHMやJITCOに4人の新たな実習先を探すよう求めた。
AHMは17年4月19日、労組へのファクスに「実習の継続意志があるということですが、東京入国管理局および、JITCOが労働組合に加入している技能実習生を受け入れる企業は見つからないとおっしゃっていましたので、移籍先企業を見つけるためにも貴組合を脱退させていただけますでしょうか」と記した。労組は不当労働行為として神奈川県労働委員会に救済を申し立てた。
村山敏執行委員長 (神奈川シティユニオン) 今回の文書は、監理団体や国際研修協力機構など技能実習制度に関わる当事者が労働組合を排除したいという論理で動いていることを露呈したと言える。よくあることだが、証拠に残す形でやるのは珍しく驚いた。人権擁護や労働法順守の中で実習生を労働者として受け入れるのではなくて、安価な労働力としてモノ扱いする実習制度そのものが問題だ。AHMは文書について「脱退した方が早く新しい実習先が見つかると思い善意で提案した。脱退工作はしていない」と主張しているが、理由にならない。
指宿昭一弁護士 (暁法律事務所、新宿区高田馬場) 文書からはこの監理団体が憲法で保障された労働基本権を全く理解していないことが分かる。使用者は労働者より圧倒的に力が強いため、使用者の労働組合への支配介入を禁じるルールが生まれた。労働法の最も重要な部分の1つであり、これを外れてしまう監理団体は失格だ。企業にとって外国人実習生のメリットは、日本人と違い労組や弁護士に駆け込まない「文句を言わない労働者」という点にある。今回の文書は正直な現状の表明だが、認められるものではない。労働基本権が守られる仕組みになっていない技能実習制度そのものを廃止すべきだ。
群馬合同労働組合 (高崎市柴崎町) 多くの実習生は泣き寝入りの状態にあるが、こうした問題が明るみに出ることに意味がある。言葉の壁がある実習生が労組を探し、加入することは現状では珍しい。労組側も積極的に関わる必要がある。
連合群馬 実習生も含め、労働者の権利を守っていかなくてはならない。